フリーランスが登記して法人設立するメリット・デメリット
法人設立のメリット
社会からの信用獲得が可能
登記をすることによって屋号・商号、代表者の氏名などを一般に公開することができます。会社の信用度を上げることができ、クライアントに対して安心感を与えることも目的の1つです。
節税に有利
個人事業主に対する所得税は、所得が多くなればなるほど高い税率を用いる累進課税制度を採用しています。つまり、儲ければ儲けるほど、税金が多く取られてしまいます。 一方で法人の場合は課税所得に関わらず税率が一定です。 利益が多くなればなるほど、個人事業主よりも、法人化した方が税金の支払いを減らすことができます。
費用計上の範囲が広い
事業に関係すれば、ざまざまな出費が経費とみなされます。図書代や新聞、インターネット費用、ガソリンなどの消耗品は個人事業主でも経費とすることができます。法人は更に、給料、保険料、住宅費などを経費として計上することができます。
決算月を自由に決められる
個人事業主の場合は1月~12月が事業年度と決められていますが、法人は決算月を自由に決めることが可能です。 これにはどのようなメリットが有るのでしょうか? 1つは節税の効果があります。法人を設立してから2期は消費税を免税するという制度があります。決算日をできるだけ遅く設定する事により、この免税期間を長くすることができます。 2つ目は資金繰りの観点からのメリットです。決算日には法人税などの税金を支払わなければなりません。この時期に社員のボーナスなど、他の支出が多いと資金繰りが苦しくなる可能性があります。支出が多い時期をずらして決算日を決めることができます。
法人設立のデメリット
お金がかかる
商号や代表者名など、項目ごとに「登録免許税」という費用がかかります。電子認証の場合は多少安くなることもありますが、少なくとも20万円~30万円ほどがかかってしまいます。 また、赤字でもランニングコストが掛かってしまい、法人住民税は毎月7万円ほどがかかります。更に、もし事業の廃止をする際にも費用がかかります。
社会保険への加入が義務
法人化すると、健康保険と厚生年金保険への加入が義務付けられます。 保険料は国民健康保険と国民年金に比べて高額になります。この保険料は会社本人が折半します。従業員が増えれば増えるほど会社の負担は大きくなります。
登記に必要な物と手順は?フリーランスの方必見
さて、ここまでで個人事業主と法人化については説明してきました。 ここからは、もし法人化をする際にどのような手続きを踏んでいくのか、必要な書類は何かを説明していきたいと思います。
法人登記の手続きって面倒なイメージがありますよね。準備する書類も多く、かなりの労力がかかります。しかし、予め全体の流れを把握しておけばスムーズに手続きをすることができます。
1.印鑑を作る
法人設立の書類を作成するために法人実印という特別な印鑑が必要になります。これは経営者が会社の代表者として契約を結ぶときに使われます。価格は1万円ほどで作る事ができます。
2.定款を作る
定款とは会社の目的・組織・構成員などについて記した最も基本的な規則です。現在はオンラインでも作成することができます。 作成できたら、発起人個人の印鑑で押印し、3部製本します。
3.定款を認証する
製本が終わったら公証人役場に行って、認証を受けます。 登記予定の地域を管轄している法務局に所属する公証人役場を調べます。見つかれば、連絡を取り、事前に公証人と訪問日のアポイントメントを取ります。
訪問日の当日に必要なもの
定款 3部
発起人の印鑑証明書※発起人が複数いて、当日に全員で行くことができない時は委任状が必要になります。
発起人の実印
発起人の身分証明書
公証人へ払う手数料5万円
定款の写し交付手数料 250円×定款のページ数
収入印紙 4万円分
4.資本金の振込
この時点では法人は設立されていないので、会社の銀行口座は存在しません。そのため、用意するのは発起人個人の銀行口座となります。
振込を証明するために以下の3点のコピーが必要になります。
記帳欄
表紙
個人情報欄(住所や名前が載っているページ)
5.登記書類の準備
いよいよ登記をするための書類を揃えていきます。
登記申請書 法務省のホームページからテンプレートをダウンロードできます。
登録免許税分の収入用紙を貼り付けた用紙 免許税は15万円を下限として、資本金額×0.7です。郵便局で収入印紙を購入します。
定款 先程用意した定款を1部用意します。
発起人の決定書 代表取締役が誰になるのかを明確にするものです。
取締役の就任承諾書 取締役に就任したことを承諾したことを証明するための書類です。
代表取締役の就任承諾書 取締役と代表取締役が別れている時のみ必要になります。
監査役の就任承諾書
取締役の印鑑証明書 定款の認証を受けるときに取得したものと同じ証明書です。
資本金の振込を証明する書類 4で用意したコピーに表紙を付けて製本します。
印鑑届出書 1で用意した法人実印の届け出をするために必要な書類です。法務局のホームページからダウンロードできます。法務省のホームページはこちら
6.登記
登記の手続きには窓口、郵送、ネット申請の3種類があります。
法務局に直接行く場合
商号登記と書かれた窓口に必要書類を提出します。この場合、登記の申請日が会社の設立日になります。
郵送の場合
封筒に「登記申請書在中」と書いて、法務局に申請書を郵送します。郵送の場合は法務局が書類の受付を下費が設立日になります。
ネット登記の場合
登記・供託オンライン申請システムを使用します。この場合も書類が受理された日が会社設立日になります。
7.登記申請後
登記申請後に、そのまま1週間ほど修正を必要とする連絡がなければ登記完了です。完了したら、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)」と「印鑑証明書」を取得しましょう。
まとめ: フリーランスが登記するかどかうかはその人の収入と考え方によって異なる
結局のところ、フリーランスの方は登記した方が良いのでしょうか?
まず、収入面から考えると利益が500万円を超えるとき、課税売上高が1000万円を超えるときに法人化を検討すると良いでしょう。
累進課税のため、利益が500万円を超えたくらいから、個人事業主の方が税率が高くなります。経費にできるものが増えるという点も考慮すると、法人の方が税金を低く抑えることができる場合があります。
もう1つの目安である1000万円についてですが、これは消費税の納税が理由です。個人事業主の課税売上高が1000万円を超えると、消費税の納税義務が発生します。
しかし、新しく会社を設立した場合、一定の条件を満たしていれば原則として設立1期目と2期目は消費税が免除されます。消費税の納税額は高くなりがちなため、このタイミングで会社設立することで大きな節税につながります。規模が大きくなれば、税金などの面から法人化を選ぶ方が多いのは事実です。
しかし、フリーランスという働き方の魅力は「自由」という要素が非常に大きいです。登記をすることで、この「自由」という要素が失われると考える人も少なくありません。どちらを取るのかはその人の考え方しだいなのかもしれません。